Maria durch ein Dornwald ging,
Kyrie eleison.
Maria durch ein Dornwald ging,
der hat in sieben Jahrn kein Laub getragen.
Jesus und Maria.
マリアはいばらの森をゆく
(主よ憐れみたまえ)*1
マリアはいばらの森をゆく、
七年のあいだ葉もつけない森を。
(イエスとマリアよ)
Was trug Maria unter ihrem Herzen?
Kyrie eleison.
Ein kleines Kindlein ohne Schmerzen,
das trug Maria unter ihrem Herzen.
Jesus und Maria.
マリアの胸の下にあるのは何?
(主よ憐れみたまえ)
小さなかわいい幼子を、痛みもなく
マリアは胸の下に身ごもっていた。*2
(イエスとマリアよ)

Da haben die Dornen Rosen getragen,
Kyrie eleison.
Als das Kindlein durch den Wald getragen,
da haben die Dornen Rosen getragen.
Jesus und Maria.
そのときからいばらは花をつけるようになった
(主よ憐れみたまえ)
幼子が母君と森を通り過ぎたときから
いばらは花をつけるようになった。
(イエスとマリアよ)

*1 キリスト教の礼拝で使われる短いが重要なギリシャ語の祈り。憐れみの賛歌とも。
*2 「抱きかかえている」と解釈する向きもある。ドイツ語にくわしい人カモン。

text & tune: 19世紀初期のドイツ民謡。文献初出は1850年だが、起源はもっと古い可能性がある。



樹木に関連する奇跡を題材とした別の民謡に《さくらんぼの木のキャロル》がある。


ペトルス・クリストゥス「枯れ木の聖母」
ヤン・ファン・アイクの工房を継いだ画家による、他に類を見ない斬新な聖母子像。旧約聖書「エゼキエル書」第31章に言及される「おごり高ぶったがゆえに滅ぼされた木の復活」と関連づけられることもある。いばらの冠のように聖母子を取り囲む枯れ木は原罪によって死を迎えたエデンの知恵の樹をあらわし、聖母を讃える「Ave」の頭文字である15の「A」がオーナメントのようにかけられている。キリストの誕生による「来たるべき再生」を暗喩している。
Petrus_christus,_madonna_dell'albero_secco

Thomanerchor Leipzig & Hans-Joachim Rotzsch
収録アルバム: Christmas In Heaven


原信子による日本語訳詞:
マリヤはあゆみぬ
キリエ・エレイソン
茂る森かげの
いばらのこみちを
キリエ・エレイソン

胸にいだけるは
キリエ・エレイソン
まどろむおさなご
平和のイェスきみ
キリエ・エレイソン

いばらの枯れ木も
キリエ・エレイソン
血に染みしあとに
清き花咲きぬ
キリエ・エレイソン



さらにおまけ(いやこれは全然関係ないだろ):



おまけのおかわり:イエスとブッダが立川でルームシェアするギャグマンガ「聖☆お兄さん」で、イエスが爆笑するといばらの冠(なぜか標準装備している)にバラが咲くという小ネタが出てくるが、関係ないと思う…とは言い切れんか有名な聖歌だし…



なぜ実写にした…